吉右衛門丈が逝かれた。
南座の顔見世が始まる数日前に。
顔見世の
七奏
顔見世
昭和53年 顔見世の「矢の根」 曽我五郎時致 役
所作の捌きが鮮やかで、口跡の素晴らしい事!!!
この一演ですっかり虜になってしまった。
前後の人で組んだ馬に乗り、大根を振り上げながら花道を去って行く。
馬の脚の人、大変だろうと思いながらも、場内が沸きに沸いた熱気を想い出す。
昭和54年 顔見世 「将軍江戸を去る〔江戸城総攻〕」 徳川慶喜 役
千住大橋で慶喜が
「天正十八年八月朔日(ついたち)徳川家康江戸城に入り、慶應四年四月十一日、徳川慶喜江戸の地を退く」
と言って一歩を踏み出した場面で、慶喜の複雑な心情を述べた吉衛門丈の歌舞伎独特の口上。
口跡の素晴らしさが際立ち、後ろ姿の滋味をじっくり観せる場面であった。
この顔見世が、私が京都で過ごした最後の年の観劇であり、以降はTVで視聴するのみとなった。
鬼平犯科帳
すっかり吉右衛門丈のファンとなった私。
顔見せで拝顔したその10年のち、TVドラマ「鬼平犯科帳」に出逢う。
鬼平こと長谷川平蔵には、継母に疎まれて無頼の生活を送った過去がある。
そのおかげか、人情に厚く下世話にもよく通ずる。
「原作にないものはやってくれるな」との原作者・池波正太郎氏の遺言により、惜しくも2016年で終了となった。
私が常に意識しておりましたのは、原作で描かれる平蔵自身の行動力、生き生きと切れのある立ち回り、市中を駆けめぐる軽やかさ、そして静かな中に見せる人情味でございます。それこそが、“鬼平犯科帳の真髄”との考えだからこそでございます。
鬼平を溌剌(はつらつ)と演じられるうちにフィナーレを迎えるのが最善と思い、来年の撮影で記念の150作となるのを期に決断致した次第です。https://www.oricon.co.jp/news/2063932/full/
鬼平に魅入られ、文庫本を全巻揃え、池波正太郎氏のファンとなる。
今年に入って、Kindleで全巻合本も購入してしまった。
吉右衛門丈 → 池波正太郎氏 という流れは、通常とは逆かもしれない。
吉右衛門の名跡
二世吉右衛門丈の尽力により、大名跡となった「中村吉右衛門」
しかしながら、三世襲名までの空位が長くなりそうだとか。
吉右衛門丈のお子は女子が4人、
四女が尾上菊之助丈に嫁がれたが、男子の孫は尾上丑之助君のみ。
彼はいずれ、菊之助・菊五郎となるであろうから、
「吉右衛門」直系の跡継ぎはいない。
中村吉右衛門さん 跡継ぎ不在で娘婿・尾上菊之助と孫が継承する “2つの大名跡”(女性自身) - Yahoo!ニュース
七奏
舞妓さんの簪を飾る小さなまねき、そこに「吉右衛門」と新たに書き入れられる日を待ちたい。
May this small seed sproud in your field. See you.